第10回定期演奏会《ブルックナー没後100年に寄せて》1996.11.9 ノバホール

【演奏者】
指揮 鈴木優 / オルガン 渡部聡 / 合唱 つくば古典音楽合唱団


【プログラムと演奏録音】
Bernardo Storace (17c.) ストラーチェ
Orgel: Selva di varie compositioni d'intavolatura
per cembalo ed organo 1. Toccata
『種々の作品の森』より
「トッカータ」
10-01.mp3:4.3MB
G. P. da Palestrina (1525-1594) パレストリーナ
Sicut cervus 鹿が泉の水を渇望する如く 10-02.mp3:2.1MB
Sitivit anima mea 我が魂は渇望せり 10-03.mp3:2.1MB
Super flumina Babylonis バビロンの流れのほとりにて 10-04.mp3:
Dies Sanctificatus 聖なる日 10-05.mp32.7MB
Bernardo Storace (17c.) ストラーチェ
Orgel: Selva di varie compositioni d'intavolatura
per cembalo ed organo 2. Monica
『種々の作品の森』より
「モニカ」
10-06.mp3:5.2MB
J. Brahms (1833-1897) ブラームス
Marienlider op.22 『マリアの歌』
  1. Der englische Gruss   天使のあいさつ 10-07.mp33.2MB
  2. Marias Kirchgang   マリアの教会詣で 10-08.mp3:2.1MB
  3. Marias Wallfahrt   マリアの巡礼 10-09.mp3:2.0MB
  4. Der Jaeger   狩人 10-10.mp3:2.0MB
  5. Ruf zur Maria   マリアへの呼びかけ 10-11.mp3:2.5MB
  6. Magdalena   マグダレーナ 10-12.mp3:1.3MB
  7. Marais Lob   マリアへの賛美 10-13.mp3:2.7MB
Bernardo Storace (17c.) ストラーチェ
Orgel: Selva di varie compositioni d'intavolatura
per cembalo ed organo 3. Follia
『種々の作品の森』より
「フォリア」
10-14.mp3:4.7MB
A. Bruckner (1824-1896) ブルックナー
Locus iste この場所は 10-15.mp3:2.4MB
Christus factus est キリストはおのれを低くして 10-16.mp3:4.2MB
Os justi 正しき人の口は 10-17.mp3:3.6MB
Orgel: Ave Regina coelorum めでたし天の王后 10-18.mp3:1.7MB
Ave Maria アヴェ・マリア 10-19.mp3:3.1MB
Virga Jesse エッサイの若枝より 10-20.mp3:3.3MB

Encore: Bruckner, Pange lingua 10-21.mp3:1.8MB
Encore: Bruckner, Ave Maria 10-22.mp3:2.9MB
Encore: Andachtsjodler 10923.mp3:2.4MB


【プログラムノート】

《合唱曲》 鈴木 優

本日の演奏会では、16世紀、後期ルネサンスを代表する作曲家パレストリーナ、そして19世紀後期ロマン派の時代に高く聳える二人の巨匠、ブラームスとブルックナーの合唱作品をお聴きいただきます。

*  *  *

ルネサンス期で最も重要な作曲家のひとりであるパレストリーナは、ローマ近郊のパレストリーナという所に生まれました。正式な名前は、ジョヴァンニ・ピエルルイージ・ダ・パレストリーナですが、出身地の名前が本人の通称となっています。生年は1525年と推定されていますが、未だ特定されていません。

1554年に故郷でオルガニストとなり、その後は1551年にローマ・聖ピエトロ寺院歌手、1554-60年ラテラーノ教会楽長、1567年エステ枢機卿楽長、1571年には聖ピエトロ寺院第2楽長の地位を得ました。その生涯のほとんどをローマで過ごし、90以上のミサ曲、500曲以上のモテット、約100曲のマドリガルなどの作品を残しました。

パレストリーナの音楽の特徴は、その先達である15-16世紀前半のフランドル出身の音楽家たちが極めた声楽ポリフォニーの技法と、イタリア的な旋律や豊かな和声を統合したものであるといえるでしょう。順次進行の多い柔らかな旋律線、安定した協和音、バスの声部がポリフォニーの一声部を担いながら、同時にほとんどの個所で和声の根音となっていること、不協和音が注意深く控えめに用いられている、といったことが、パレストリーナ独特の調和のとれた、清純で透明な世界を形成しています。

詩篇第42編をテキストとする"Sicut cervus"と、続けて演奏いたします "Sitivit anima mea"は、1581年に出版された"第2モテット集"に収められています。この曲の冒頭では、同じ旋律がテノール、アルト、ソプラノ、バスという順に出てきます。各声部が独立して動きつつ、絡みあいながら音楽を構築してゆくのがお聴きになれると思います。これがこの時代の合唱曲の基本である声楽ポリフォニーの様式です。

"Super flumina Babylonis"も1581年の曲集の中の曲で、パレストリーナ自身が最も好んだ曲と伝えられています。哀調を帯びたこのモテットのテキストは、詩篇第137編から採られています。紀元前586年にイスラエル民族のユダ王国がバビロニアによって滅ぼされ、エルサレムの住民がバビロニアに連行されるという、いわゆる"バビロン捕囚"という事件が起こります。この詩篇は、その捕囚民の望郷の思いと悲しみを歌ったものです。

"Dies Sanctificatus"は1561年の"第1モテット集"の中にあり、クリスマスのための曲です。"地上にもたらされた光"そのもののような明るい響きを持っています。そして終結部は歓喜に満ちた3拍子の舞曲によって締めくくられます。

*  *  *

19世紀後半の音楽界は、急進派である"ヴァーグナー派"と保守派である "ブラームス派"の2大党派にわかれ、論争が繰り広げられました。ブルックナーは第3交響曲を献呈するほどのヴァーグナーの心酔者でしたので、ブラームスとはライヴァル関係であると目されていました。しかし当人同士は直接には、その論争に関与していたわけではなく、お互いの作品を表面上では、理解の外にあるといったような態度を取りながらも、強い関心を持ち合っていたと言えるでしょう。相反する陣営に属し作風も異なる二人ですが、合唱に強い関心を示し、すばらしい作品を残し、また合唱指揮者としての経歴を持っていたことは大きな共通点であります。

*  *  *

ヨハネス・ブラームスは1833年5月7日にハンブルクで生まれます。父は町の楽師であり、"息苦しいほど小さな部屋"に4人の家族が住むといった貧しい生活だったようです。10代前半のヨハネスは、音楽の勉強をするかたわら、酒場やダンスホールでピアノを弾き、家計を助けなければなりませんでした。1853年9月30日にブラームスはシューマンを訪ね、自作の曲を演奏します。シューマン夫妻はその才能に感嘆し、 "新音楽時報"に熱烈な賛辞である"新しい道"と題するエッセイを書いてブラームスを世に紹介します。1857年にブラームスはデトモルトの宮廷で初めて定職を得ます。その内容は合唱の指揮とピアノを教えることでした。そして1859年、ピアノ協奏曲第1番の初演失敗、婚約者アガーテとの別離の後、ブラームスは故郷ハンブルクに引き篭り、そこで女声合唱団を指導することになります。この時期には、"12の歌曲とロマンツェ op.44"をはじめとして多くの合唱曲が作曲されました。

本日演奏いたします"Marienlieder op.22"も、この年に書かれました。この7曲からなる連作歌曲のテキストは、ドイツに古くから伝わる、聖母マリアに関する民衆的な詩から取られています。ブラームスは民謡に強い関心を持ち、多くの合唱編曲、またはピアノ伴奏の付与を行なっています。この曲の旋律はブラームス自身による創作と思われますが、どれも民謡調であり、実際の民謡の編曲とほとんど区別がつきにくいまでになっています。

第1曲"Der englische Gruss "と第4曲"Der Jaeger"はルカ伝中の"天使祝詞"のパラフレーズであり、少々ユーモラスでさえある受胎告知の場です。天使の吹くホルンが音画的に描かれているのも、とても楽しいものです。第2曲、第3曲は民衆的なマリア伝説であり、ここでもいっせいに響き始めた鐘に音画的表現が用いられています。また第3曲終結部の"天国が無法な力によって踏みにじられた"の部分の迫真の書法も注目されるべきでしょう。第5曲ではマリアに対する心からの敬虔な祈りが捧げられ、第6曲はマグダラのマリアにイエスの復活が告げられる場面です。終曲では5節からなるマリアへの賛美が歌われます。

この素朴で愛すべき合唱曲を歌い、あるいは聴くということは、中世に描かれた様々なマリアのエピソードをモチーフとした教会の祭壇画を丹念に見てゆくといった趣があると思われます。

*  *  *

今年はアントン・ブルックナーの没後100年という記念すべき年にあたります。当つくば古典音楽合唱団といたしましても、ブルックナーのモテットを演奏することによって、ささやかながらのオマージュを捧げたいと思います。

ブルックナーは1824年9月4日、オーストリア、リンツ南方のアンスフェルデンという寒村に生まれます。父は村の小学校の教師であり、また教会の聖歌隊指揮者やオルガニストでもありました。ブルックナー自身は13歳で聖フローリアン修道院の聖歌隊員になりますが、その後は一時父に倣って教員を志望します。1848-1856年の8年間は聖フローリアンのオルガニストとして過ごしますが、同時に教師の仕事をしています。1856年にリンツ大聖堂のオルガニストに就任しますが、ブルックナーが音楽家としての生活を自分の人生と考えるようになったのは、この32歳の年からであったようです。

ブルックナーは今日では交響曲の作曲家として知られていますが、このような経歴からも、カトリックの教会音楽がその創作の基礎であると言えるでしょう。またリンツでのブルックナーは男声合唱団"フロージン"で合唱指揮者としての手腕を発揮し、合唱団の力を向上させ、ドイツやオーストリアでの合唱祭でも高い評価を得るようになります。ブルックナーは1868年にウィーン音楽院教授、並びに宮廷礼拝堂オルガニストとなり、以降の人生をウィーンで過ごすこととなります。

"Locus iste"は1869年8月11日の日付が付けられており、同年9月の新リンツ大聖堂の献堂式で歌われたと思われます。

"Christus factus est"は1884年にウィーンで初演されました。テキストは新約聖書のピリピ人への手紙第2章から採られています。

"Os justi"は交響曲第5番が完成された翌年の1879年に聖フローリアンの合唱指揮者、イグナーツ・トラウミーラーの要望により、8月28日の聖アウグスティヌスの祝日のために作曲されました。この合唱指揮者は、パレストリーナを理想とし、教会音楽を浄化しようとする"チェチーリア運動"の主唱者でした。ブルックナーもそのことを充分考慮し、このモテットの作曲では教会旋法を用い、シャープ、フラットを使わないなどといった制約を自らに課しました。

"Ave Regina coelorum"は本来、単旋律の歌唱声部とオルガンの伴奏という型で作曲されていますが、本日はオルガンの独奏でお聴きいただきます。この曲はあたかもグレゴリオ聖歌の和声付けのように響きますが、この旋律もブルックナー自身による創作です。

"Ave Maria"は1861年5月12日、リンツの合唱団"フロージン"によって初演されました。テキストはルカ伝中の"天使祝詞"による7声のモテットです。

"Virga Jesse"は1885年に作曲されましたが、すでに前年に交響曲第7番が初演されており、後期の最円熟期の内容を持つ極めて完成度の高い曲となっています。テキストは旧約聖書の民数記第17章によっています。

ブルックナーの音楽には、宇宙や大自然の様相から民族的な舞曲までが渾然一体となっております。しかしこれら無伴奏の教会音楽には、その中でも特に崇高な部分が純粋に結晶化していると感じられます。今後さらにブルックナーの教会音楽を歌い、あるいは聴く機会が増えることを願ってやみません。



《オルガン曲》 渡部 聡

オルガン独奏で演奏される3曲は、ベルナルド・ストラーチェの現存する唯一の曲集である「種々の作品の森、チェンバロとオルガンのためのインタヴォラトゥーラ」(1664年、ヴェネツィアにて出版)から採られている。ストラーチェについては、この曲集のタイトルベージに記されている「メッシーナ市の議会附属礼拝堂副楽長」という肩書き以外、何もわかっていない。鍵盤音楽の発展に絶大な影響力を及ぼしたフレスコバルディから約半世紀経過しているものの、その伝統はいまだ衰えることなく続いている。しかし、一方で、形式が整理され、単純化してゆく傾向が見られる。曲集全体に創意と活力が溢れ、この時期の鍵盤音楽がけっしてマンネリズムに陥っていないことを示している。

「トッカータ」は、短い即興的な部分を両端に持ち、主題の上で関連をもつ4拍子と3拍子の2つのカンツォーナが主要な部分を成している。「モニカ」は、当時広く知られていた歌の旋律による8つの変奏で、最後の2つの変奏はコレンテ(3拍子系の舞曲)と記されている。「フォリア」はコレッリやヴィヴァルディの作品が有名だが、同じ低音進行のパターンに基づく18の変奏である。後の時代の作品よりも、舞曲としての性格を強く残している。


【歌詞対訳】
                                
Sicut cervus (Psalm 42) 鹿が泉の水を渇望するが如く(詩篇第42番)
Sicut cervus desiderat ad fontes aquarum: 鹿が泉の水を渇望するが如く、
ita desiderat anima mea ad te Deus. 我が魂は、汝、神を渇望す。

Sitivit anima mea 我が魂は、生ける泉たる神を渇望せり(詩篇第42番)
Sitivit anima mea ad Deum fontem vivum: 我が魂は、生ける泉たる神を渇望せり。
quando veniam, et apparebo ante faciem Dei? いつに我は赴きて、神の御顔にまみえることあらんや。
Fuerunt mihi lacrymae meae panes die ac nocte: 我が涙は、昼も夜も、我が食物なりき。
dum dicitur mihi quotidie: Ubi est Deus tuus? 人々我に終日「汝の神いずこにありや」と言いける時。

Super flumina (Psalm 137) バビロンの流れのほとりにて(詩篇第137番)
Super flumina Babylonis, バビロンの流れのほとりにて、
illic sedimus et flevimus, われらは座し、そして涙を流したり。
dum recordaremur tui Sion, 汝、シオンを思い出しつつ。
in salicibus in medio eius, われらはその中の柳の木に
suspendimus organa nostra. われらの琴をかけたり。

Dies Sanctificatus 聖なる日
Dies sanctificatus illuxit nobis: 聖なる日は我らに輝けり。
venite gentes, et adorate Dominum: もろもろの民よ、来たりて、そして主を讃えよ。
quia hodie descendit lux magna in terris. 今日、大いなる光が地上に降りたるゆえに。
Haec dies quam fecit Dominus: 今日、主の為したまえることを、
exsultemus et laetemur in ea. 今日我らはほめたたえるべし、そして歓呼すべし。


Marienlieder 『マリアの歌』
Der englische Gruss 天使のあいさつ
Gegruesset Maria, du Mutter der Gnaden! 「ごきげんようマリア、恵み深い母となられる方!」
So sangen die Engel der Jungfrau Maria このように天使たちは、おとめマリアに歌いかけました。
in ihrem Gebete, darinnen sie rang. マリアが熱心にお祈りをしていた時のことです。
Maria, du sollst einen Sohn empfangen! 「マリア、あなたはひとりの男の子を身ごもります!
Darnach tun Himmel und Erde verlangen, 天と地は待ち望んでいます。
da du die Mutter des Herren sollst sein. あなたが主の母となられることを。」
O Engel, wie mag ich das erleben; 「まあ天使様、どうしてそんなことが起こり得ましょう。
ich habe mich noch keinem Manne ergeben わたくしはまだ男の方に身をまかせたことはありません。
in dieser weiten und breiten Welt. この広い広い世間で誰一人。」
Wie Tau kommt ueber die Blumenmatten, 「ちょうど露がお花畑をおおうように、
so soll dich der heilige Geist ueberschatten, 聖霊があなたをおおうでありましょう。
so sollt der Heiland geboren sein. そうして、救い主がお生まれになるのです。」
Maria, die hoeret sollches gerne, これをきいて喜んで、マリアは
sie sprach: ich bin eine Magd des Herren, 語りました。―「わたくしは主の婢女です。
nach deinem Worte geschehe mir. 天使さまのお言葉がわたくしに実現いたしますように。」
Die Engel nun sanken auf ihre Knie, すると天使たちはひざまづいて、
sie sangen alle Maria den Lobgesang! みんなでマリア向かって賛美の歌を歌ったのでした。

Marias Kirchgang マリアの教会詣で
Maria wollt zur Kirche gehn, マリアは教会に詣でようとしましたが、
da kam sie an den tiefen See. 途中で、深い湖に行き当たりました。
Als sie wohl an den See hinkam, マリアが湖の岸までやって来ると、
der Schiffmann jung stand fertig da. そこで若い舟頭が舟を用意しておりました。
Ach Schiffmann, schiff mich ueber das Meer, 「ねえ舟頭さん、わたしを湖のむこうに渡して下さいな。
ich geb dir was dein Herz begehrt. わたし、あなたが欲しいものを何でもあげますから。」
Ich schiffe dich wohl ueber das Meer, 「ぼくは君を湖のむこうに渡してあげよう、
wenn du willst meine Hausfrau sein. もしも君がぼくのお嫁さんになってくれるなら。」
Soll ich erst deine Hausfrau sein, 「あなたのお嫁さんになるくらいなら、
viel lieber schwimm ich ueber das Meer. わたし、湖を泳いで渡った方がましだわ。」
Als sie wohl in die Mitte kam, マリアが湖の中ほどまで来ると、
fingen alle Gloecklein zu laeuten an. あちこちから鐘の音が響き始めました。
Sie laeuten gross, sie laeuten klein, ある鐘の音は大きく、ある鐘の音は小さく響き、
sie laeuten wohl alle zugleich. すべての鐘は同時に鳴り渡りました。
Maria kniet' auf einem Stein, マリアは岩の上に跪き、
dem Schiffmann sprang sein Herz entzwei. 舟頭の心臓は真二つにはりさけました。

Marias Wallfahrt マリアの巡礼
Maria ging aus wandern, マリアは旅に出ました。
so fern ins fremde Land, はるか遠くの異国へと、
bis sie Gott den Herren fand. 主なる神に出会うために。
Sie hat ihn schon gefunden マリアはやがて主に出会いました。
wohl vor des Herodes Haus, ちょうどヘロデ王の宮殿の前で。
er sah so betrueblich aus. 主はとても悲しそうでした。
Das Kreuz, das musst er tragen 主は十字架を運ばねばなりませんでした。
nach Jerusalem vor die Stadt, エルサレムの町へと。
wo er gemartert ward. そこで主は磔にされようとしているのです。
Was trug er auf seinem Haupte? 主が頭に乗せているものは何でしょう?
ein' scharfe Dornenkron; それは鋭いいばらのとげの冠。
das Kreuz, das traegt er schon. 主が背負われているのは十字架です。
Daran soll man bedenken わたしたちは銘記せねばなりません。
ein jeder jung or alt, 老いも若きもみな。
dass das Himmelreich leidet Gewalt! 天国が無法な力によって踏みにじられたことを。

Der Jaeger 狩人
Es wollt gut Jaeger jagen, 狩人が上手に狩をしようとしました、
wollt jagen von Himmelshoehn; 天国の高みより。
was begegn't ihm auf der Heiden? 荒野で狩人が出会ったのはだあれ?
Maria, die Jungfrau schoen. それは、うるわしきおとめマリア。
Der Jaeger, den ich meine, 私の思う狩人とは
Der ist uns wohl bekannt; わたしたちのよく知っている方。
er jagt mit einem Engel, その方は一人の天使とともに狩をなさいます。
Gabriel ist er genannt. 天使の名は、ガブリエル。
Der Engel blies sein Hoernlein, 天使は角笛を吹き鳴らします。
das laut' sich also wohl; するとそれはよく響き渡ります。
Gegruesst seist du, Maria, 「ごきげんようマリア
du bist aller Gnaden voll! あなたはあらゆる恩寵に満たされている。
Gegruesst seist du, Maria, ごきげんよう、マリア。
du edle Jungfrau fein! あなたは高貴なるおとめ、素敵なひと、
Dein Schoss soll hegen und tragen あなたのお腹が宿すことになるのは、
ein Kindlein zart und klein. かわいい、ちっちゃな赤ちゃん。
Dein Schoss soll hegen und tragen あなたのお腹が宿すことになるのは、
ein Kindlein zart und klein. かわいい、ちっちゃな赤ちゃん。
das Himmel und auch Erden その赤ちゃんが、天と、そして地をも、
einsmals wird nehmen ein. やがて支配することになるのです。」
Maria die vielreine fiel 無垢なるおとめマリアは
nieder auf ihre Knie, ふかくひざまづきました。
dann sie bat Gott vom Himmel, それからマリアは天の神さまにお祈りをしました:
sein Wille, sein Will geschehen soll. 「神さまの御旨が実現いたしますように。
Dein Will, der soll geschehen あなたさまの御旨が実現いたしますように。
ohn sonder Pein und Schmerz. 特別の痛みも苦しみもなく。」
Da empfing sie Jesum Christum やがてマリアはイエス・キリストを身篭もりました。
in ihr jungfraeulich Herz. その無垢なからだの中に。

Ruf zur Maria マリアへの呼びかけ
Dich, Mutter Gottes, ruf' wir an, 神の御母よ、わたしたちはあなたに呼びかけます。
bitt fuer uns, Maria! わたしたちのために祈ってください。マリアよ!
Tu uns in Angsten nicht verlan, わたしたちを不安に陥いれないで下さい。
Jesum, dein' Sohn, der Not ermahn, あなたのご子息であるイエスさまに危機をお告げ下さい。
die er um menschlich Geschlecht イエスさまは人間のため危機に立ち向かって下さいます。
wollt han, bitt fuer uns, Maria! わたしたちのために祈ってください。マリアよ!
Da wir vollkommen werden gar, わたしたちが完全に満ち足りるように、
bitt fuer uns, Maria! わたしたちのために祈ってください。マリアよ!
Leib, Ehr und Gut auf Erd bewahr, この世での肉体と名誉と財産とを守ってください。
da wir in Zeit viel guter Jahr また、わたしたちが死後に永遠に
dort leben mit der Engel Schar, 天国で天使の群れとともに生きることを
bitt fuer uns, Maria! わたしたちのために祈ってください。マリアよ!
Du bist der Brunn, der nicht verseicht, あなたは尽きることのない泉です。
bitt fuer uns, Maria, わたしたちのために祈ってください。マリアよ!
da uns der heilig Geist erleucht 聖霊がわたしたちを照らし、
zu wahrer Reu und ganzer Beicht! まことの悔い改め、完全な懺悔へと導くことを。
Jesus, dein Sohn, dir nicht verzeicht, あなたのご子息イエスさまは、あなたを拒みはしません。
bitt fuer uns, Maria! わたしたちのために祈ってください。マリアよ!

Magdalena マグダレーナ
An dem oesterlichen Tag 過越しの祭の日に、
Maria Magdalena ging zu dem Grab; マリア・マグダレーナはイエスさまのお墓に行きました。
was fand sie in dem Grabe stehn? 彼女はお墓の前に誰が立っているのを見たのでしょう?
einen Engel wohl getan. それは、ひとりの優しそうな天使でした。
Der Engel gruesst sie in der Zeit: その時、天使は彼女に挨拶し、申しました:
"Den da suchet das vielselige Weib, 「汝清らかなる女よ、ここに汝の探している方は、
er ist erstanden von dem Tod, 死からよみがえられた。
den du salben wolltest." 汝はあの方に香油をぬらんとしてまいったのであろう。」
"Maria!" ruft er ihr zu hant, 「マリアよ」、そのように呼ぶ声が近くでしました。
da erkennt sie ihren Heiland, そこに彼女が認めたのは、彼女の救い主でした。
sie sah in aller der Gebaerde, 彼女は必死で主を見ようとしましたが、
sam er ein Gaertner waere. 彼はただの庭師のようにも見えました。

Marias Lob マリアへの賛美
Maria, wahre Himmelsfreud, マリア、まことの天の喜び、
der Welt Ergoetzlichkeit! この世の輝き。
Wer wollt dich nicht lieben, 一体誰があなたのことをお慕いしないでしょうか?
du stehst mir geschrieben, あなたのことは、私の胸に書き込まれました。
ja bist mir gegraben そうです、私の胸に刻み込まれたのです。
mit tiefen Buchstaben 深い刻印によって
in meinem Herzelein! 私の小さな胸の中に。
Wie schmelzet ein Karfunkelstein ちょうど紅玉が
im Lorbeerkraenzelein, 月桂樹の冠のなかに溶け込んでいるように、
so geht es mir eben, 全くそのように
mein Seel und mein Leben わたしの魂とわたしの命は
vor Lieb sich zertrennen 愛にほだされて
und in sich verbrennen そして燃え尽きるのです、
bei deinem Nennen! あなたの名を呼ぶときには。
Der ganzen Schoepfung reiche Zier 全ての被造物の豊かな装飾も、
vergleicht sich nicht mit dir. あなたには比べるべくもありません。
Es d rfen die Blumen 花々といえども、
ihr Sch nheit nicht r hmen, その美しさを誇ることは許されません。
sie m ssen sich schaemen, 花々は恥じ入らねばなりません。
du tuest benehmen マリアよ、あなたは奪い取ってしまうのです、
all ihre Zierlichkeit. すべての花々の愛くるしさを。
Des Himmels Sternenangesicht 天の星々も、
und aller Sonnenlicht, 太陽の光も、
samt Edelgesteinen, そして宝石も、
sie d rfen nicht scheinen, 輝くことは許されません。
die Perlen, Korallen, 真珠も、珊瑚も、
Gold, Silber, sie fallen 黄金も、銀も、それらはみな、
vor dir in Finsternis. あなたの前では光を失うのです。
Maria, o mein hoechste Freud, マリアよ、おお、私の最大の喜び、
die Welt ist mir verleidt, わたしはもうこの世に未練はありません。
ich suche zu sterben, わたしは死を求めています、
du woll'st mir erwerben あなたはわたしのために、
nur Gottes Gnaden, 神さまの恩寵を頂戴して下さろうとしています。
auf hoeheren Pfaden より高いところへと、
so scheid ich froehlich hin. こうして、わたしは喜んでこの世から旅立ちます。


Locus iste この場所は
Locus iste a Deo factus est, この場所は、神の作りたまえるところ。
inaestimabile sacramentum 比類なき秘蹟は、
irreprehensibilis est. 決して誤ることなきものなり。

Christus factus est キリストはおのれを低くして
Christus factus est pro nobis obediens, キリストはおのれを低くして、
usque ad mortem autem crucis. 死の時まで、拷問に苦しまれた。
Propter quod et Deus exaltavit illum, 神が彼の行ないを高め、そしてその行ないにひれ伏し、
et dedit illi nomen, quod est super omne nomen. あらゆる人々の名の上に神があるようにするために。

Os justi 正しき人の口は
Os justi meditabitur sapientiam, 正しき人の口は智恵を念想し、
et lingua ejus loquetur judicium. 彼の舌は正義を語る。
Lex Dei ejus in corde ipsius 神の法は、彼その人の心の中にあり、
et non supplantabuntur gressus ejus. 彼の歩みは踏みにじられることなし。
Alleluja. アレルヤ。

Ave Maria アヴェ・マリア
Ave Maria gratia plena Dominus tecum. めでたし恩寵満てるマリア、主は汝とともにいます。
Benedicta tu in mulieribus 女たちの中で、汝は祝福されたるもの、
et benedictus fructus ventris tui, Jesus, そして汝の胎内の果実、イエスもまた祝福されたるもの。
Sancta Maria, mater Dei, 聖なるマリアよ、神の御母よ、
ora pro nobis peccatoribus, 祈りたまえ、我ら罪人のために、
nunc et in hora mortis nostrae, 今とわれらの死の時にあたりて。
Sancta Maria, ora pro nobis. 聖なるマリアよ、我らのために祈りたまえ。
Amen. アーメン。

Virga Jesse エッサイの若枝より
Virga Jesse floruit: エッサイの若枝より、そは花開けり。
Virgo Deum et hominem genuit: おとめは神にして人たる方を生みたまえり。
pacem Deus reddidit, in se 神は平和を回復したまえり、いと低きものと
reconcilians ima summis. いと高きものを和解せしめつつ。
Alleluja! アレルヤ。
(つくば古典音楽合唱団)