第12回定期演奏会《モーツァルト レクイエム》1998.11.21 ノバホール

【演奏者】
指揮 鈴木優 / ソプラノ 山内房子 / アルト 阪口直子 / テノール 大島博 / バス 山崎岩男 /オルガン 渡部聡 / コンサート・ミストレス 神戸愉樹美 / オーケストラ つくば古典音楽合奏団 (第1ヴァイオリン 神戸愉樹美,大西律子,高橋真二 ; 第2ヴァイオリン 小池吾郎,山内久美子,矢島栄子 ; ヴィオラ 諸岡涼子,上田美佐子 ; チェロ 高橋弘治 ; コントラバス 諸岡典経 ; バセットホルン 重松希巳江,中村克巳 ; ファゴット 坂田在世,高林美樹 ; トランペット 長田吉充,大矢智子 ; トロンボーン 松永憲二,櫻井広介,貝森康夫 ; ティンパニー 福島優美) / 合唱 つくば古典音楽合唱団


【プログラムと演奏録音】
G. F. Frescobaldi (1583-1643) フレスコバルディ
TOCCATA TERZA (libro primo 1615) トッカータ第3番(第1巻) 12-01.mp3: 4.5MB
G. P. da Palestrina (1525-1594) パレストリーナ
O Beata Trinitas おお至福なる三位一体 12-02.mp3: 3.1MB
Cristobal Morales (ca1500-1553) モラレス
Manus Tuae Domine あなたの御手は、主よ 12-03.mp3: 3.7MB
G. F. Frescobaldi (1583-1643) フレスコバルディ
TOCCATA TERZA (libro secondo 1627) トッカータ第3番(第2巻) 12-04.mp3: 7.2MB
Arvo Paert (1935- ) ペルト
Magnificat 私の魂は主をあがめ  
-休憩-
W. A. Mozart (1756-1791) モーツァルト
Requiem K626 レクイエム
  I. Introitus  入祭文  
   Requiem     12-06.mp3: 4.7MB
  II. Kyrie  キリエ 12-07.mp3: 2.6MB
  III. Sequenz  続誦  
   1. Dies irae     12-08.mp3: 2.0MB
   2. Tuba mirum     12-09.mp3: 3.5MB
   3. Rex tremendae     12-10.mp3: 2.3MB
   4. Recordare     12-11.mp3: 5.3MB
   5. Confutatis     12-12.mp3: 2.4MB
   6. Lacrimosa     12-13.mp3: 3.0MB
  IV. Offertorium  奉献誦  
   1. Domine Jesu     12-14.mp3: 3.9MB
   2. Hostias     12-15.mp3: 4.0MB
  V. Sanctus  サンクトゥス 12-16.mp3: 1.7MB
  VI. Benedictus  ベネディクトゥス 12-17.mp3: 4.8MB
  VII. Agnus Dei  アニュス・デイ 12-18.mp3: 3.1MB
  VIII. Communio  聖体拝領誦  
   Lux aeterna     12-19.mp3: 5.6MB

Encore: Mozart, Ave verum corpus K.618 12-20.mp3: 2.7MB


【プログラムノート】

《合唱曲》 鈴木 優

本日の演奏会では、前半に16世紀ルネサンス期の音楽家パレストリーナと モラレスのモテット、そして現代を代表する作曲家、アルヴォ・ペルトの合唱曲をお聴きいただきます。そして、休憩後の後半にはモーツアルトの最後の作品"レクィエム" を管弦楽、4人の独唱者と共に演奏いたします。

*  *  *

16世紀の代表的作曲家パレストリーナは、1525年ローマの近郊のパレストリーナという町に生まれました。正式な名前はジョヴアンニ・ピエールルイージ・ダ・パレストリーナですが、出身地の名前が本人の通称となっています。1544年に故郷でオルガニストとなり、その後は1551年に教皇庁内聖歌隊カペルラ・ジュリア楽長、1555年システィナ礼拝堂聖歌隊歌手、1555-60年ラティーノ教会楽長、1567年エステ枢機卿楽長、1571年には再びカペルラ・ジュリアの楽長の地位を得ました。

その生涯の殆どをローマで過ごし、90以上のミサ曲、500曲以上のモテット、約100曲のマドリガルなどの作品を残しました。1594年に没したパレストリーナの葬儀はサン・ピエトロ大聖堂で行われ、ローマの重要な音楽家たちが皆参列しました。

パレストリーナの音楽の特徴は、その先達であるフランドル出身の音楽家たちが極めた声楽ポリフォニーの技法と、イタリア的な旋律や豊かな和声を統合したものであると言えるでしょう。順次進行の多い柔らかな旋律線、バスの声部がポリフォニーの一声部を担いながら、同時に殆どの箇所で和声の根音となっていること、注意深く控えめに用いられた不協和音、といったことがパレストリーナ独特の広い空間にふさわしい調和のとれた世界を形成しています。

"O beata Trinitas "は1569年に出版された"モテトゥス集第1巻"に収録された、聖三位を讃える5声部のモテットです。ポリフォニーが優位を占める部分、"父と子と聖霊"と歌うホモフォニーの部分、そして喜びの声である "アレルヤ"の部分が見事なバランスで構成されています。

*  *  *

クリストバル・デ・モラレスは1500年頃セビーリャに生まれ、イベリア半島出身で最初の大作曲家として知られるようになります。モラレスは自分の出身地に対して、大きな誇りを抱き続けました。セビーリャには豊かな音楽的伝統があり、大聖堂では水準の高い音楽家が公職に就いていたため、モラレスは故郷を離れて音楽教育を受ける必要はありませんでした。

1526年にスペイン最古の大聖堂であるアビラ大聖堂、1528年にプラセンシア大聖堂の楽長を歴任した後、1535年にはローマ教皇庁聖歌隊歌手となります。10年間のローマでの職務のうち後半の5年間に多くの作品が発表されましたが、健康を害したために多くの病欠日数の記録が残っています。

1545年にはローマを去りスペインに戻り、大司教座のあるトレド大聖堂の楽長になります。しかしそこでは自分の給料によって少年聖歌隊員を寄宿させ養う義務があったため、借金を作ってしまいます。また重病にもかかり、さらには音楽様式の違いなどの問題もあり、2年で辞任します。

1551年にはマラガ大聖堂の楽長となりますが、歌手たちが従わない、少年聖歌隊の規則の問題などで罰金を科せられるなど、不幸な晩年のうち1553年に亡くなりました。

モラレスの評価は没後30年間、非常に高いものとなり、ヨーロッパ各地からメキシコにまで、その音楽は知られるようになりました。モラレスの音楽は殆どが典礼用であり、23のミサ曲、マニフィカト16曲、モテット約90曲が残されています。

"Manus tuae Domine"はヨブ記10章8~12節をテキストとする、死者のための聖務日課のための5声部のモテットです。2つのソプラノ(カントゥス)声部は厳格なカノンを歌い、全体は教会旋法のフリギア調で作曲されています。パレストリーナに比べると古風な響きですが、自然とにじみ出るテキストの内容の音化には、すばらしいものがあります。

*  *  *

現代音楽に関心のある方ならアルヴォ・ペルトの名前はよくご存じでしょう。古典音楽合唱団に於いて、現存する作曲家の作品を演奏するのは初めてのことです。

ペルトは、1935年エストニアのパイデという小さな町に生まれます。子供の頃自分の家にラジオがなかったので、通りの備え付けスピーカーから聞こえてくるラジオの音楽を何時間でも聴いていたそうです。放送局の音響ディレクターをしながら、タリン音楽院の作曲家のクラスを1963年に卒業します。1962年には子供のためのカンタータ"僕たちの庭"とオラトリオ"世界の足取り"で全ソ連青年作曲家コンクール第1位となっています。

60年代には12音技法を用いた前衛的な作曲を行っていました。当時ソ連ではこの技法は禁止されていて、当局から非難を受けるようになります。そして60年代のおわりに偶然中世の音楽を耳にしたことをきっかけに、作風を大転換していくことになります。

ペルトは「音楽が複雑であればあるほど、力があると信じていたが、事実は逆だった」と語っています。1968年から5年間作曲活動を中止し、中世、ルネサンス音楽の研究に没頭します。ごくわずかな音だけで、どのようにしたら音楽が作られるかを古い音楽の中に探りました。そして1976年以降に、今日私たちが知る新しいペルトの音楽が生まれたのです。

新しい音楽は何の先入観もなく聴いて、それぞれが自分の感性で、その価値を判断するべきでしょう。わたしがはじめてペルトを聴いたとき(それはヨハネ受難曲のLPレコードでした)思ったのは、「これはいったい、いつの時代の音楽なのだろうか」ということです。この思いは今ではますます強くなってきています。新しい響きでありながら、遠い昔に、あるいは自分が生まれる前に、あるいは人間の存在以前の時間から、時空を越えて、現在生きている私たちに届いてくる音のように思われます。そしてその静かな世界は自然と聴くものを瞑想に誘います。

1980年にオーストリアへ亡命し、まもなくベルリンに移ったペルトは、その頃からキリスト教の典礼文に作曲する宗教曲を発表しています。"Magnificat"は1989年にベルリンの市と、大聖堂の合唱団に献呈されています。テキストはルカによる福音書第1章46~55節の聖母マリアの賛歌によっています。

*  *  *

ヴォルフガング・アマデウス・モーツアルトは1756年1月27日ザルツブルクに生まれます。当時のザルツブルクはローマ教皇領であり、教皇から任命された大司教が治める町でした。そこには当然大いなるカトリック教会音楽の伝統がありました。当地でのモーツアルトの仕事は、宮廷や貴族のための音楽と並んで教会音楽の作曲と演奏が重要なものでした。最初のミサ曲K139(47a)はヴィーンの孤児院教会の献堂式のためのものでしたが、モーツアルト12歳の1768年に作られています。

映画の「アマデウス」を見ていただくと良くわかりますが、モーツアルトは仕事上の待遇面での不満などから、大司教とは不仲となり、1781年にはザルツブルクでの仕事を解任され、以降死ぬまでの10年間をヴィーンで過ごすことになります。この当時の音楽家は、宮廷あるいは教会に仕える、いわば宮仕えが普通でした。その中にあってモーツアルトは、作曲の注文を受ける、ピアノのレッスンをする、演奏活動を行うといった仕事をフリーランスとしていたわけです。これは当時としては非常に画期的な人生の選択でした。しかしモーツアルトほどの才能があっても、またこの時代にこのような生き方は難しく、晩年には経済的に 行き詰まり、数多くの借金を依頼する手紙を書くことになりました。ちなみにヴィーン時代の作品は、オペラ「後宮よりの誘拐」K.384以降のものです。

ヴィーン時代にモーツアルトが作曲した教会音楽は、わずかに3曲だけです。結婚後、ザルツブルクでの奉納ミサのために作曲した1783年の"ハ短調ミサ"K.427、1791年6月バーデンの合唱指揮者アントン・シュトルのために作曲された "Ave verum corpus"K.618、そしてモーツアルトの最後の作品となる、"レクィエム"K.626です。

19世紀には、そのロマン主義的な気分から過去の音楽家を神格化したり、悲劇の人物と見なしたりするような伝統が多く生まれました。レクィエムの成立にも、様々な伝説が伝えられました。「1791年晩春にモーツアルトは、名前も告げない灰色の服を着た男からレクィエムの作曲を依頼され、前金として謝礼の半額を受け取った。」という話が伝えられています。

そして19世紀の半ばには突然、イタリア語で書かれたオペラの台本作者ダ・ポンテ宛の手紙が現れました。内容を要約すると「私の頭は混乱しています。あの見知らぬ男の姿が目の前から追い払えません。私には最後の時が鳴っているように思えます。...これは私の葬送の歌です。未完成のまま残しておくわけにはいきません。」というようなレクィエム作曲中の心情が語られています。なかなか感動的な手紙なのですが、今では偽作であるとされています。

また依頼主は誰かということですが、ヴィーン南方のシュトゥパッハ城主フランツ・フォン・ヴァルゼック伯爵であると判明しています。伯爵は2月に亡くなった夫人ののために作曲を依頼しました。また伯爵は著名な作曲家に依頼した曲を自分で写譜し、自分の楽団員に演奏させ、その作曲者を当てさせるという趣味を持っていたと伝えられます。匿名での依頼には、こういった事情も関与していたかも知れません。しかし現在では、伯爵がモーツアルトにレクィエムを依頼するという、公証人の立ち会いのもとに作成された契約書も発見されています。

レクィエムの作曲半ばの12月5日に、モーツアルトは病死します。未亡人となったコンスタンツェは契約を守り、残りの謝礼を受け取るためには、この未完のレクィエムを完成させる必要がありました。コンスタンツェは、まずモーツアルトも高く評価していたヨーゼフ・アイブラーに依頼しますが、何曲かのオーケストレーションを試みた後、スコアをコンスタンツェに返します。コンスタンツェは更に何人かに打診した後、弟子であるジェスマイヤーに依頼し、本日演奏いたします形に完成という運びとなります。

ジェスマイヤーはモーツアルトの死の直前に、レクィエムを完成させるための指示を受けていたと言われていまいましたが、それなら、何故モーツアルトの死後、一番に依頼を受けなかったのかという疑問が残ります。

今回演奏に用いますジェスマイヤー版の、モーツアルト直筆の部分とジェスマイヤーによる補筆は以下のようになります。

  • Introitus、Kyrie
    モーツアルトにより完成
  • Dies irae、Tuba mirum、Rex tremendae、Recordare、Confutatis
    声楽パートと管弦楽バス声部はモーツアルトにより完成、また管弦楽の重要な音型は書き残されている。オーケストレーションのかなりの部分はジェスマイヤーによる補筆。
  • Lacrymosa
    管弦楽の前奏2小節と声楽パート8小節までがモーツアルトにより残されている、ここが絶筆の箇所です。9小節以降はすべてジェスマイヤーによる補筆。
  • Domine Jesu、Hostias
    Dies iraeとほぼ同じ状況
  • Sanctus、Benedictus、Agnus Dei
    全面的にジェスマイヤーによる創作
  • Lux aeterna、Cum sanctis
    Introitus、Kyrieの音楽を歌詞を付け替えて使用

今日ではジェスマイヤーの補筆に対しての批判から、主にオーケストレーションをし直した楽譜も使われています。しかし当合唱団の最初のレクィエムのアプローチとしては、モーツアルトの生前の弟子であり、死後数ヶ月で完成したジェスマイヤー版を経験したいと思います。

最近の音楽学の進歩はロマンチックな伝承をはぎ取って、事実を明るみに出していきます。しかしモーツアルトのレクィエムのような偉大な音楽の価値はそのような事によって何ら影響を受けるものではない事を確信いたします。



《オルガン曲》 渡部 聡

ジロラモ・フレスコバルディ(1583-1643)は、イタリア初期バロックの作曲家のなかも、後生への影響という点でとりわけ重要な人物です。1608年、25歳の若さでローマのサンピエトロ大聖堂のオルガニストとなったフレスコバルディは、当時から鍵盤楽器の輝かしい大家としての名声を博し、スター的な存在でした。彼のもとにはヨーロッパ各地から優秀な弟子が集まり、その直接、間接の影響は18世紀半ばに至るまで顕著に見られます。

多くの鍵盤楽器の中でも特にトッカータは、それまでのアルカイックなスタイルから、よりダイナミックで叙情性に富み、柔軟性を持った形式へと発展させられ、バロック期を通じて鍵盤楽器の代表的な形式となりました。

本日演奏する2曲のうち、第1巻のトッカータ第3番はフレスコバルディの典型的な書法によって書かれており、走句を多用した幻想的で即興的な部分と、対位法的で厳格な部分とが交代します。第2巻のトッカータ第3番は、「聖体奉挙のための」と記され、カトリックの典礼の中でも特に神秘的な部分で奏される目的をもった曲です。

本日使用のオルガンは草苅徹夫氏製作(1993年)の3列(8' 4' 2')のポジティフです 。


【歌詞対訳】
O BEATA TRINITAS おお至福なる三位一体
O beata et benedicta et gloriosa Trinitas, おお至福なる、祝福され、栄光に満ちたる三位一体
Pater, et Filius, et Spiritus Sanctus. 父と子と聖霊よ。
Alleuia. アレルヤ。
O beata et gloriosa unitas, おお至福なる、栄光に満ちたる一性
Pater, et Filius, et Spiritus Sanctus. 父と子と聖霊よ。
Alleuia. アレルヤ。
 
MANUS TUAE DOMINE あなたの御手は、主よ
Manus tuae, Domine, あなたの御手は、主よ
fecerunt me et plasmaverunt me totum in circuit: 私を創り、私のすべてを完全に形作ってくださった
et sic repente praecipitas me? それなのにかくも突然、あなたは私を滅ぼしてしまわれるのか?
Memento quaeso quod sicut lutum feceris me 願わくば、御心に留めてください。あなたは私を泥として創り、
et in pulverem reduces me. 塵へと戻したもうであろうことを。
Nonne sicut lac mulsistri me, あなたは私を乳のように注ぎ出し、
et sicut caseum me coagulasti? チーズのように私を固めてくださったではありませんか。
pelle et carnibus vestisti me: 皮と肉であなたは私を覆い、
ossibus et nervis compegisti me. 骨と筋であなたは私を組合わせてくださった。
Vitam et misericordiam tribuisti mihi, あなたは私に命と憐れみを与え、
et visitatio tua custodivit spiritum meum. あなたの眼差しは、私の霊を護ってくださった。
 
MAGNIFICAT 私の魂は主を崇め
Magnificat anima mea Dominum, 私の魂は主を崇め
et exultavit spiritus meus 私の霊は喜び讚えます、
in Deo salutari meo; わが救い主なる神を。
quia respexit humilitatem ancillae suae, 主はその婢の弱さにさえ心を留め給うたのですから
ecce enim ex hoc beatam me dicent きっとこれからのち、私を幸いな女と言うでしょう、
omnes generationes. あらゆる代の人びとは。
Quia fecit mihi magna, qui potens est: 力ある方が私に大いなることを為し給うたのです、
et sanctum nomen eius, その御名は尊く、
et misericordia eius そしてその憐れみは
a progenie in progenies timentibus eum. 代々かぎりなく、主を畏れる者に及びます。
Fecit potentiam in bracchio suo, 主は自らの御腕をもって力をふるい、
dispersit superbos mente cordis sui, 心の思いの驕りたかぶる者を追い散らし、
deposuit potentes de sede, 権力ある者をその座から引き降ろして
et exaltavit humiles, へりくだる者を引き上げ、
esurientes implevit bonis, 飢えている者を善きものにて満たし、
et divites dimisit inanes. 富める者を手ぶらのまま追い出します。
Suscepit Israel, puerum suum, 主はそのしもべイスラエルを受け入れ給い、
recordatus misericordiae suae その憐れみをお忘れになりません。
sicut locutus est ad patres nostros, 私たちの父祖に約束して下さったとおりに、
Abraham et semini eius in saecula. アブラハムとその子孫に、とこしえに。
Magnificat anima mea Dominum,

私の魂は主を崇めます。

REQUIEM 死者のための鎮魂ミサ曲
I. Introitus 入祭文
Requiem
Requiem aeternam dona eis, Domine, 主よ、永遠の平安を彼らに与えたまえ、
et lux perpetua luceat eis. そして絶えざる光が彼らに輝かんことを。
Te decet hymnus Deus in Sion, 神よ、汝はシオンにてほむべきかな、
et tibi reddetur votum in Jerusalem. また誓いはエルサレムにて汝に果たされん。
Exaudi orationem meam, わが祈りを聞きたまえ、
ad te omnis caro veniet. すべて肉なる者は汝のもとへ来たらん。
 
II. Kyrie
Kyrie eleison. 主よ、憐れみたまえ。
Kyrie eleison. 主よ、憐れみたまえ。
Kyrie eleison. 主よ、憐れみたまえ。
Christe eleison. キリストよ、憐れみたまえ。
Christe eleison. キリストよ、憐れみたまえ。
Christe eleison. キリストよ、憐れみたまえ。
Kyrie eleison. 主よ、憐れみたまえ。
Kyrie eleison. 主よ、憐れみたまえ。
Kyrie eleison. 主よ、憐れみたまえ。
 
III. Sequenz 続誦
1. Dies irae
Dies irae, dies illa, かの日こそ怒りの日、
solvet saeclum in favilla, 世界を灰に帰せしめん
teste David cum Sibylla. ダヴィッドとシビラの証しのごとく。
Quatus tremor est futurus, どれほどのおののきあらん、
quando judex est venturus, 審き手の来たりて
cuncta stricte discussurus! すべてが厳かに打ち砕かれるときには。
2. Tuba mirum
Tuba mirum spargens sonum 全地の墳墓に鳴りわたる
per sepulchra regionum, 奇しき喇叭の響きにて、
coget omnes ante thronum. 人みな王座のもとに駆り集められん。
Mors stupebit et natura, 死と自然は驚かん、
cum resurget creatura, そは造られたるものの審き手に
judicanti responsura. 答えんとて蘇ればなり。
Liber scriptus proferetur, 総ての事がらの記されし
in quo totum continetur, 書物は差し出されん、
unde mundus judicetur. それによりて世の裁かれんため。
Judex ergo cum sedebit, かくて審き手出てて座したもうや、
quidquid latet apparebit, 隠れたる事ことごとく顕われ、
nil inultum remanebit. 一として報いられざる事はなからん。
Quid sum miser tunc dicturus? そのとき哀れなるわれ果たして何をかいわん、
Quem patronum rogaturus? 誰をか弁護者と仰がん、
Cum vix justus sit securus. 正しき者すら心安からならざれば。
3. Rex tremendae
Rex tremendae majestatis, 畏るべき威光の王よ、
qui salvandos salvas gratis, 御恵みもて救わるべき者を救いたまう方よ、
Salva me, fons pietatis. われをも救いたまえ、慈しみの泉よ。
4. Recordare
Recordare Jesu pie, 思いたまえ、慈しみ深きイエスよ、
Quod sum causa tuae viae, 汝の来たりたまいしはそもわがためなりしを。
ne me perdas illa die. かの日われを滅ぼしたもうな。
Quaerens me, sedisti lassus, われを探さんとて疲れて座したまい、
redemisti crucem passus, われを贖わんとて十字架の苦しみを忍びし方よ、
tantus labor non sit cassus. かかる御苦しみを虚しくしたもうな。
Juste judex ultionis, 厳しく罰したまう義なる審き主よ
donum fac remissionis, 赦しの恵みを施したまえ。
ante diem rationis. 評定の日の至らざらん間に
Ingemisco, tamquam reus, われは嘆く、罪人のごとくに。
culpa rubet vultus meus わが顔は罪を恥じて赤らむ。
supplicanti parce Deus. 神よ、伏して願い奉るわれを赦したまえ。
Qui Mariam absolvisit, マグダラのマリアを赦し、
et latronem exaudisti, 盗賊の願いをも聞き入れたまいし汝は、
mihi quoque spem dedisti. われにもまた希みを与えたもうた。
Preces meae non sunt dignae, わが願いは相応しからざれど、
Sed tu bonus fac benigne, されど善なる汝、御慈悲もて
ne perenni cremer igne. われの永遠の業火にて焼かれざらんことを。
Inter oves locum praesta, 羊のうちに所を置き、
et ab haedis me sequestra, 牡山羊よりわれを離し、
statuens in parte dextra. 右に立たせたまえ。
5. Confutatis
Confutatis maledictis, 呪われし者を押さえ、
flamis acribus addictis. 烈しき焔に渡したまわんとき
Voca me cum benedictis. われを祝せられし者とともに招きたまえ。
Oro supplex et acclinis, われひざまづき伏して祈る、
cor contritum quasi cinis, 灰のごとく砕けたるこころもて。
Gere curam mei finis. わが終りをはからいたまえ。
6. Lacrimosa
Lacrimosa dies illa, かの日は涙の日なるかな、
qua ressurget ex favilla かくて灰より蘇らん、
judicandus homoreus, 罪ある人の裁きを受けんとて、
Huic ergo parce Deus. されば彼を惜しみたまえ、神よ。
Pie Jesu Domine, 慈しみ深きイエスよ、
Dona eis requiem. 彼らに平安を与えたまえ。
Amen. アーメン
 
IV. Offertorium 奉献誦
1. Domine Jesu
Domine Jesu Christe, Rex gloriae, 主イエス・キリスト、栄光の主よ、
libera animas omnium fidelium defunctorum 死せるすべての信徒の魂を解き放ちたまえ、
de poenis inferni, et de profundo lacu, 地獄の罰と、深き淵より。
libera eas, de ore leonis, 彼らを獅子の口より解き放ちたまえ、
ne absorbeat eas tartarus, 彼らが冥府に呑み込まれざらんがため、
ne candant in obscurum, 暗闇に落ち入らざらんがため。
sed signifer sanctus Michael さるを旗手ミカエのル
repraesentet eas in lucem sanctam, 彼らを聖なる光へと差し出さんことを。
Quam olin Abrahae promisisti, かつてアブラハムと
et semini ejus. その子孫に、汝の約束したまいしごとくに。
2. Hostias
Hostias et preces tibi Domine 犠牲と祈願を、主よ、汝に
laudis offerimus, わらら讚美として捧ぐ。
tu suscipe pro animabus illis, 彼らの魂のために汝受け入れたまえ、
quarum hodie memoriam facimus, 今日われらが記念するその魂のために。
fac eas, Domine, 彼らをして、主よ、
de morte transire ad vitam. 死より生へと移るを得させたまえ。
Quam olin Abrahae promisisti, かつてアブラハムと
et semini ejus. その子孫に、汝の約束したまいしごとく。
 
V. Sanctus
Sactus, sancuts, sanctus 聖なるかな、聖なるかな、聖なるかな。
Dominus Deus Sabaoth. 万軍の神なる主。
Pleni sunt caeli et terra gloria tua. 汝の栄光は天と地に充つ。
Hosanna in excelsis. いと高きところにオザンナ
 
VI. Benedictus
Benedictus qui venit in nomine Domini. 祝せられるかな、主の御名において来たる方。
Hosanna in excelsis. いと高きところにオザンナ
 
VII. Agnus Dei
Agnus Dei, qui tolis pecata mundi, 神の子羊、世の罪を除きたもう方よ、
dona eis requiem. 彼らに平安を与えたまえ。
Agnus Dei, qui tolis pecata mundi, 神の子羊、世の罪を除きたもう方よ、
dona eis requiem. 彼らに平安を与えたまえ。
Agnus Dei, qui tolis pecata mundi, 神の子羊、世の罪を除きたもう方よ、
dona eis requiem sempiternam. 彼らに絶えざる平安を与えたまえ。
 
VIII. Communio 聖体拝領誦
Lux aeterna
Lux aeterna luceat eis, Domine, 永遠の光が彼らに輝かんことを、主よ。
cum sanctis tuis in aeternum, 汝の慈しみ深くいますゆえに、
quia pius es. 主は慈しみ深くいますゆえに。
Requiem aeternam dona eis Domine, 永遠の平安を彼らに与えたまえ、主よ。
et lux perpetua luceat eis. かくて絶えざる光の彼らに輝かんことを。
Cum sanctis tuis in aeternum, 汝の慈しみ深くいますゆえに、
quia pius es. 主は慈しみ深くいますゆえに。


(又野 聡子訳)