ソプラノ/ | 木島千夏 |
ヴィオラ・ダ・ガンバ/ | 小澤絵里子 |
オルガン/ | 渡部 聡 |
指揮/ | 鈴木 優 |
合唱/ | つくば古典音楽合唱団 |
Bruna | |
G.P.da Palestrina(1525-94) | Dies Sanctificatus |
T.L.de Victoria(1548?-1611) | O Magnum Mysterium |
W.Byrd(1543-1623) | Ave verum corpus |
P.P.Bencini(1675-1755) | Jesu, Redemptor Omnium |
C.Monteverdi(1567-1643) | Vespro della Beata Vergine (xii) Ave Maris Stella |
M.Durufle(1902-1986) | Quatre Motets sur des Thèmes Grégoriens |
J.Brahms(1833-1897) | Warum ist das Licht gegeben dem Müseligen? |
H.Schuez(1585-1672) | Selig sind die Toten |
J.S.Bach(1685-1750) | Lobet den Herrn, alle Heiden |
今回の演奏会のプログラムは16世紀後半から今世紀にかけてという幅広い時代の作品が集められています。おもに恋愛など、個人的感情を題材としたマドリガーレなどの世俗曲は、より室内楽的な編成で演奏されるべきものであると考えて除外し、宗教音楽によってプログラムを構成いたしました。
前半はカトリック教会の典礼音楽です。
最初の3曲は、イタリアのパレストリーナ、スペインのビクトリア、イギリスのバードという後期ルネサンスを代表する作曲家の作品です。彼らに先立つ、デュファイやジョスカンといったフランドルの音楽家たちが確立した、ポリフォニーの様式を継承しつつ、その調和のとれた美の世界に劇的な表現力を盛り込んでいった彼らの作品には、すでにバロック芸術の要素も多分に見い出せるでしょう。
続く2曲は、イタリア・バロックの作品です。ベンチーニはバッハやヘンデルと同時代の教会音楽家です。このクリスマスの讃歌は、終始 12/8 拍子のシチリアーノと呼ばれる舞曲のリズムから成っています。このリズムは羊飼いを連想させるもので、メサイアなどにも用いられています。この曲では17世紀まで支配的であったポリフォニー様式は見られず、バロック音楽独特の様式である通奏低音の上で独唱とホモフォニックな合唱が歌い交わしていきます。
ヴェネツィアのサン・マルコ大聖堂の楽長であったモンテヴェルディは、ポリフォニー様式とモノディー様式という新旧両方の手法を使いこなした、音楽史上最高の巨匠のひとりです。「めでたし海の星」は 1610年に出版された『聖母マリアの夕べの祈り』の中の讚歌です。グレゴリオ聖歌の旋律を定旋律とし、冒頭の充実した響きの8声部の合唱に続き、同じ旋律を3拍子に変化させたものを4声部のホモフォニックな合唱で歌います。さらに、器楽によるリトルネッロをはさみながら、3人の独唱者が定旋律を歌い、最後にもう一度、冒頭の合唱が繰り返されるという多様な構成をもっています。
「グレゴリオ聖歌の主題による4つのモテット」は 1960年に出版されました。デュリュフレは、教会のオルガニストやパリ音学院の教授を務ましたが、作曲家としても宗教音楽やオルガン曲にすぐれた作品を残しています。特に「レクイエム」は近年良く知られるところとなりました。この4曲では、伝統的なグレゴリオ聖歌の旋律と、近代フランス和声との見事な融合が見られます。また、グレゴリオ聖歌の旋律の解釈には、グレゴリオ聖歌研究の中心であるソレム修道院の演奏解釈が反映されています。
後半のプログラムではドイツ・プロテスタント教会の宗教音楽を、お聴きいただきます。
ブラームスは、4曲の交響曲をはじめとする器楽曲や歌曲の作曲家として知られていますが、合唱曲の分野でも、「ドイツ・レクイエム」のような管弦楽付きの大曲の他、7曲のモテット、約30曲のオリジナル作品、そしてドイツ民謡の編曲集が残されています。「なにゆえ、悩む者に光が与えられたのか」は 1877年の作品で、バッハの研究者フィリップ・シュピッタに献げられました。全体は4つの部分からなり、第1部のテキストは旧約聖書の「ヨブ記」より採られ、苦しみに満ちた問いかけが歌われます。第2部は6声のカノンで、「天の神に向って、手とともに心も上げよう」というテキストにふさわしい上行音型の主題が歌われ、続く第3部では新約聖書の「ヤコブの手紙」より、忍耐強く耐える者を讃えるテキストが歌われます。この部分は、第1部の問いに対する答えと見ることができるでしょう。第4部は、ルターによる有名なコラールをバッハのスタイルで和声付けした4声体です。カトリックの教会音楽の土台がグレゴリオ聖歌であるとするなら、プロテスタントの教会音楽の土台は何といってもコラールにあるといえるでしょう。
バッハに先立つこと、ちょうど100年前に生まれたシュッツの作品を2曲演奏いたします。1曲目は 1636年に出版された『小教会コンツェルト集』第1集の中のもので、通奏低音の伴奏による独唱用のモテットです。シュッツはこの曲に「オラトリオの様式で」と表記し、朗唱的な劇的に語られる演奏を、指示しています。「主にあって死す者は幸いなり」は 1648年に出版された『教会合唱曲集』第1集に含まれるものです。シュッツはこの曲集の序文で、対位法による作曲技法の重要さを述べています。新約聖書の「ヨハネ黙示録」の語句をテキストとする、このモテットのもつ限りない慰めと力強さは、真にシュッツならではの境地であるといえるでしょう。
プログラムの最後は、バッハのモテットでしめくくりたいと思います。今日、6曲が伝えられているバッハのモテットは、葬儀などの機会に際しての依頼に応じて作曲されました。「もろもろの異邦人よ、主を讃えよ」は4声部の合唱と通奏低音という編成で書かれています。この曲は作曲された当時の楽譜は現存せず、19世紀になってからの印刷譜でのみ伝わっており、成立年代や、その事情は不明なままとなっております。独立したモテットではなく、失われたカンタータの中のひとつの楽章ではないか、という説も有力です。
1982年東京芸術大学声楽科卒業。卒業後2年間東京混声合唱団に在団。
声楽を、吉岡巌、橋本周子、山田実の各氏に師事。
合唱指揮を田中信昭氏に師事。
現在、主にバロック声楽曲の研究と演奏、合唱団の指導育成に当っている。
古典音楽合唱団(東京)主宰。日本声楽発声学会会員。室内合唱団ヴォイス・ラボ団員。
国立音楽大学教育音楽科卒業。松尾道子、川口絹代両氏に師事。卒業後、聖グレゴリオの家音学院古楽科にて、発声と古楽歌唱を橋本周子氏に師事。R.ヤコブス、E.カークビィ、P.ヒリヤー、J.キャッシュらの指導を受ける。モンテベルディの「オルフェーオ」、カヴァリエーリの「肉体と魂の劇」、F.カッチーニの「エウリディーチェ」等、バロック・オペラやオラトリオに出演。国立音大音楽研究所研究員。
フェリス女学院短期大学音楽科卒業。在学中よりヴィオラ・ダ・ガンバを神戸愉樹美氏に師事。日本ヴィオラ・ダ・ガンバ協会会員、前理事。神戸愉樹美ヴィオラ・ダ・ガンバ合奏団メンバー。
団員 ソプラノ 芦川信子 井土敬子 伊藤隆子 遠藤恵子 大里亮江 鈴木万里子 須藤須美 高野牧子 根本典子 野上今日子 福田由美子 村上雅子 八木美津子 湧井枝里子 アルト 相崎伸子 大儀真澄 徐 淑子 当間綾子 等々力節子 荷福真由美 花沢容子 村山昌子 本山敬子 テノール 稲垣 譲 浦部朴郎 大森敏秀 柏崎 哲 鈴木尉元 佃 栄吉 永好 昭 本山貞一 バス 苅田幸雄 岸 善一 倉持孝広 小林嶺夫 進藤宗郎 山根誠一郎 渡辺 玲 (賛助会員および今期休団中の団員) 相見ひろ子 天野ゆり子 井手克美 大内広明 尾崎正紀 落合祐子 鎌形倫子 下田頼子 西沢恒幸 原田幸治郎 松井加名子 三橋利明