第8回定期演奏会《ロッシーニの小荘厳ミサ曲》1994.11.26

<演奏者>
指揮 山崎岩男 / ソプラノ 松田昌恵 / アルト 栗林朋子 / テノール 大野光彦 / バス 三浦克次 / ピアノ 高島理佐 / ハルモニウム 渡部聡 / 合唱 つくば古典音楽合唱団


<プログラムと演奏録音>

G.Rossini (1792-1868) ロッシーニ
Messe solennelle 小荘厳ミサ曲
1. Kyrie-Christe Soloists and chorus 08-01.mp3 7:06
2. Gloria-Laudamus Soloists and chorus 08-02.mp3 2:48
3. Gratias Terzetto for contralto, tenor, and bass 08-03.mp3 4:42
4. Domine Deus Tenor solo 08-04.mp3 5:40
5. Qui tollis Duet for soprano and contralto 08-05.mp3 7:05
6. Quoniam Bass solo 08-06.mp3 8:06
7. Cum Sancto Soloists and chorus 08-07.mp3 6:30
-休憩-
8. Credo Soloists and chorus 08-08.mp3 4:13
9. Crucifixus Soprano solo 08-09.mp3 3:36
10. Et resurrexit Soloists and chorus 08-10.mp3 9:32
11. Preludio religioso during the Offertory, for Harmonium 08-11.mp3 9:34
12. Sanctus Soloists and chorus 08-12.mp3 4:21
13. O Salutaris Soprano solo 08-13.mp3 6:00
14. Agnus Dei Contralto and chorus 08-14.mp3 7:36

<プログラムノート> 山﨑岩男

ジョアッキーノ・ロッシーニ(1792-1868)というイタリアの作曲家の名前は、しばしば陽気な喜歌劇の題名と共に現われるため、その宗教作品に触れた事のない者にとってはそれがどの様な音楽であるのか想像しにくいに違いない。

確かにロッシーニはその半生、情熱の全てをオペラに捧げたのだった。しかしいよいよ円熱期を迎えようという36才、セリアオペラの「ウィリアム・テル」の成功を機に突然オペラ作曲界から引退し、それから死に至るまでの半生を「老いのあやまち」と称して数曲の歌曲、宗教曲の作曲活動のみに費やしたのである。「小荘厳ミサ曲」は、彼がオペラの華やかなステージを降りて30余年の作品、(それも、死の4年前)、つまり「老いのあやまち」の最後期にあたる1863年にひっそりと生みだされた作品である。

ロッシーニのオペラ界に於ける功績としては、歌手全盛時代にあってそれまで歌手にまかされていた旋律の装飾法を整理し、(歌い手の自己主張のための勝手な即興を禁止し)、作曲者に旋律の主導権を戻したこと、また漸強法(クレッシェンド)などの音楽表現の導入等が挙げられる。つまり、彼のデビュウした時代はまだ歌手万能時代であり、彼はそんな「歌い手天下」に「作曲家の作品が問われる時代」へ向けての、改革の鉈をふるった人であるというわけである。

ロッシーニの時代のオペラは、どの作曲家も全て新たに作曲することがめずらしく、必ずどこかに自分の既製のアリアや序曲を入れたり、またひどい場合には歌手の希望した民謡等をも挿入したのだった。そのような作品であっても、「社交の場としての劇場」のBGMとして、オペラは充分な役割を果たしていたし、中に1つ見せ場さへつくっておけば作曲家は何とか安泰なのだった。

そういった当時の「作曲」の在り方の中に於ても、ロッシーニは自分の作る旋律と音楽の必然を頑強に主張し、また、ドラマをもりあげるための手法を多く試みては、それらを聴衆に理解させてゆく努力を惜しまなかった。そしてついに「セビリアの理髪師」、「アルジェのイタリア女」に見るように、彼は自分の理想と劇場の要求をみごとに「喜歌劇」の中にバランスさせたのだった。

しかし彼は引退した。それはあたかもオペラ作曲の中には音楽の表現の限界があると見切りをつけたかの様であり、また彼自身の音楽の真実に近付こうとしてのことであるかの様でもあった。実際、フィオリトゥーラ(装飾音群)のたくさんついた華美なアリアのメロディーがまだまだ劇場に流れている時代に生まれた、この「小荘厳ミサ曲」の、テキストと深くむすびついた説得力のある力強い音楽は、ロッシーニのオペラ引退の理由と、音楽に対する彼の真摯な姿勢をわれわれに思わせずにはおかない。

オリジナルの小荘厳ミサのスコアの扉には 「2台のピアノとハルモニウムの伴奏を持つ4部からなる『小ミサソレムニス』。男、女、及びカストラートの三つの性による十二人のうたい手(4人のソロと8人の合唱)で充分。この十二人は小天使に他ならない。…」といったロッシーニのメモがある。伴奏がオーケストラである必要を認めず、(他人にオーケストレーションされることを嫌うがゆえに一応オーケストラバージョンは出版したものの、演奏されることをよしとしなかった。)この小編成で作曲したのは、彼がその半生で、オペラをとおして、知りつくした人の声の魅力と彼自身の音楽を充分に表現できるのはこの形であると判断したからに他ならない。しかし、マエストロ・ロッシーニ、本日は、諸般の事情と時代の要求から、1パート約12名の小天使がうたいますことをお許しください。


【歌詞対訳】

演奏会記録のページに戻る


特別演奏会《ロッシーニの小荘厳ミサ曲》1994.7.16 「太陽の國」テアトロデルソーレ(横浜市)

<演奏者>
指揮 山崎岩男 / ソプラノ 五十嵐郁子 / アルト 栗林朋子 / テノール 大野光彦 / バス 三浦克次 / ピアノ 高島理佐 / ハルモニウム 渡部聡 / 合唱 つくば古典音楽合唱団


<プログラムと演奏録音>

G.Rossini (1792-1868) ロッシーニ
Messe solennelle 小荘厳ミサ曲
1. Kyrie-Christe Soloists and chorus 19940716-01.mp3 40:49
2. Gloria-Laudamus Soloists and chorus
3. Gratias Terzetto for contralto, tenor, and bass
4. Domine Deus Tenor solo
5. Qui tollis Duet for soprano and contralto
6. Quoniam Bass solo
7. Cum Sancto Soloists and chorus
-休憩-
8. Credo Soloists and chorus 19940716-02.mp3 44:54
9. Crucifixus Soprano solo
10. Et resurrexit Soloists and chorus
11. Preludio religioso during the Offertory, for Harmonium
12. Sanctus Soloists and chorus
13. O Salutaris Soprano solo
14. Agnus Dei Contralto and chorus