第5回定期演奏会《モーツァルトの教会音楽》1991.11.15

<演奏者>
指揮 鈴木優 / ソプラノ 大谷 しほ子 / アルト 阪口直子 / テノール 山内広文 / バス 山崎岩男 / 第1ヴァイオリン 大谷美佐子,大田 也寸子 / 第2ヴァイオリン  阿部 麻利子,二橋 洋子 / チェロ 中沢 央子 / コントラバス 桜井茂 / トランペット 前田 進,池田 英三子 / オルガン 渡部聡 / 合唱 つくば古典音楽合唱団


<プログラムと演奏録音>

Wolfgang Amadeus Mozart (1756-1791) モーツァルト
Missa brevis in F K.192 小ミサ曲
  1. Kyrie   あわれみの賛歌 05-01.mp3 4:01
  2. Gloria   栄光の賛歌 05-02.mp3 4:49
  3. Credo   信仰宣言 05-03.mp3 6:22
  4. Sanctus   感謝の賛歌Ⅰ 05-04.mp3 1:34
  5. Benedictus   感謝の賛歌Ⅱ 05-05.mp3 2:06
  6. Agnus Dei   平和の賛歌 05-06.mp3 4:18
-休憩-
Wolfgang Amadeus Mozart (1756-1791) モーツァルト
Vesperae de Dominica K.321 主日のための晩課
  1. Dixit Dominus   主は仰せられる 05-07.mp3 4:07
  2. Confitebor   主をほめまつる 05-08.mp3 6:14
  3. Beatus vir   幸いなるかな 05-09.mp3 4:41
  4. Laudate pueri   ほめたたえよ、主のしもべたちよ 05-10.mp3 4:41
  5. Laudate Dominum   主をほめたたえよ 05-11.mp3 4:53
  6. Magnificat   わが心は主をあがめ 05-12.mp3 5:13
Encore: Mozart, Ave verum corpus K.618 05-13.mp3 3:20

<プログラムノート> 鈴木優

本年1991年は、周知のようにヴォルフガング・アマデウス・モーツァルト(1756-1791) の没後200年にあたります。

クラシック音楽に対して日頃冷淡なテレビ局でさえモーツァルトを題材とした番組を放送しましたし、モーツァルトの作品を演奏するコンサートは数え切れないほどありましたので、皆様の中には少々食傷気味だという方もいらっしゃるのではないでしょうか。

モーツァルトがあまりにも特別な存在であるので仕方ないとも思えるのですが、他にも今年が”記念年”である有名な作曲家はいるわけです。例えば、協奏曲「四季」で有名なヴィヴァルディ(1678-1741)は没後250年ですし、「新世界交響曲」をものしたドヴォルザーク(1841-1904)は生誕150年ですね。14世紀初頭にフランスで”アルス・ノヴァ”という音楽理論書をあらわしたことで知られるフィリップ・ド・ヴィトリー(1291-1361)にいたっては、なんと今年が生誕700年!!

6年前の1985年はバッハが生誕300年ということで注目されましたが、ヘンデルも同年の生まれですし、シュッツの生誕400年でもあったわけですが、必ずしも正当な注目を集めなかったのは記憶に新しいところです。

*  *  *
モーツァルトは、その35年の生涯の間に、オペラやダンスのための音楽、室内楽、協奏曲、管弦楽のための音楽など様々なジャンルの音楽を作曲しました。

教会音楽の分野にも18曲のミサ曲、4曲のリタニエ、2曲のヴェスペレ、その他多数のモテット、ミサ単独楽章が残されています。

本日のプログラムの前半で演奏いたしますミサ・ブレヴィスK.192は1774年6月24日にザルツブルグで完成されました。モーツァルト18歳の作品です。

モーツァルトの生地であるザルツブルグは当時ローマ教会領であり、領主はローマ教会より任ぜられる大司教職の貴族が務めるという都市でした。モーツァルトは、少年時代ヨーロッパの大都市を演奏旅行しましたが、その後1772年から1781年までの間、父レオポルド同様、大司教に仕える音楽家だったわけで、教会音楽の大部分はこの時期の作品です。

当時の大司教であったヒエロニムス・コロラドはミサの司式に長い時間をかけることを好まず、大きなミサでも全体で45分を超えることを許さなかったといわれています。

このような制約の中で作曲されたため、この時期のミサ曲には20分前後の簡潔なものが目立ちます。

K.192もそういった条件の中で、短いながら密度の濃い音楽となっています。全曲にわたって魅力的な旋律や転調に満ちていますが、ここではクレドの中で繰り返される主題が、交響曲第1番(K.16)、第33番(K.319)、そしてジュピター交響曲のフィナーレなどで使われているものと同じであることを指摘しておきたいと思います。

主日のためのヴェスペレK.321は1779年にやはりザルツブルグで作曲されました。

ヴェスペレとはカトリック教会の公的な祈りである聖務日課のうちの「晩課」であり、日没時の「夕べの祈り」を意味します。

テキストは旧約聖書中の5つの詩篇とルカ伝によるマニフィカトで、各章の結尾には頌栄がつきます。

全6楽章は調性も様式も非常に多様です。ラウダーテ・プエリは古い教会音楽のスタイルであるフーガで作曲されています。

その一方でラウダーテ・ドミヌムは華やかなコロラトゥーラを聴かせるオペラのアリアのようであり、また他の楽章は合唱、独唱者、器楽が競い合うコンチェルト様式となっています。

以前、LPレコードで音楽を聴いていた時代には輸入盤を漁ってもモーツァルトのミサ曲を全部聴くことはできませんでした。CDの時代になった現在では、ほぼ全作品が録音されたようです。

本日の私達の演奏が契機となってモーツァルトの教会音楽に興味をもたれる方がおられましたら何よりと存じます。


【歌詞対訳】

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